デザインされたリノベーション。
賃貸する上でも益々注目されてきているカテゴリーの物件になります。
一見、普通のマンションなのですが、その中の1室だけまったく違う内装にリノベーションされていたりと、同じく感度の高いデザインがなされているデザイナーズマンションとはまた違った趣きがあるのがリノベーション物件の良さです。
これは元々分譲で購入したものをオーナーの好みでリノベーションしたものであったりするのですが、こういった物件が最近はとても増えてきています。
今回は、このようなリノベーションされて貸しに出されているリノベーション賃貸物件について、特にメリットとデメリットを中心にお話ししたいと思います。
まずリノベーションとは、何なのかからになりますが、定義をすると以下のような内容になります。
『中古住宅に対して、機能・価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修を行うこと。例えば、水・電気・ガスなどのライフラインや構造躯体の性能を必要に応じて更新・改修したり、ライフスタイルに合わせて間取りや内外装を刷新することで、快適な暮らしを実現する現代的な住まいに再生していくこと。』
(リノベーション住宅推進協議会から引用)
このようにリノベーションは、単なる建物内外の設備やデザインの刷新のみならず、住む人たちの「ライフスタイルを大きく変える方法」ということになります。
では、リノベーション賃貸物件とは何なのでしょうか?
リノベーション物件には大きく分けて、投資用として作られたものと、住まいのために購入したもの(実需用)とがあります。
投資用とは、いわゆる個人・法人の大家さんが所有する物件を賃貸されるケースになります。
最近では不動産投資家の人たち用にリノベーションをした物件を不動産会社が販売するケースも多くなってきています。
ほとんどが大家さんの所有物件が旧くなってしまい、借り手がなくなってきたり、賃料が下がってきてしまったケースにリノベーションによって再生する場合や、建て直すには費用が掛かりすぎるので、建て直し自体が法律上できなくなってしまったのでといった理由でリノベーションするケースになります。
中には歴史的な建造物であるとか、ヴィンテージマンションなど建物の価値を残して行きたいとかの理由でリノベーションすることもあります。
次に、住まいのために購入したもの(実需用)とは、住宅ローンなどを使って中古マンションや戸建ての物件を購入して自身のライフスタイルや好みに合わせてリノベーションした物件の事になります。
今回お話しするケースでは、気に行って住んでいたけども、結婚やお子様が出来たりして手狭になったり、間取りが合わなくなったりと、ライフスタイルの変化に伴って賃貸に出されるケースです。
シースルーのバスルームが部屋の真ん中にあったり、ボルダリングできる壁があったり、100㎡超をあえてワンルームにしたり、、際立ったデザイン性の物件がこの実需用の物件では散見されます。
デザイン好きの方たちが賃貸物件を求める場合、この実需用の物件のほうが投資用のものよりもデザイン性やこだわり度合いにおいては目を見張るものが多く人気がありますが、このような物件は投資用に比べると数は圧倒的に少なく、賃貸に出されても即募集終了のものが多くなっています。
以上のように個性的なデザインによる個性的なライフスタイルの実現こそがリノベーションの醍醐味、メリットになるかと思いますが、こと建物に関しては、リノベーションされる建物は20年~40年前に建てられた戸建てやマンションに対して行われる事が多く、中には50年やそれ以上といった年季の入ったものもあります。
そしてその建物を外壁や共用部、室内に至るまで丸ごとリノベーションする場合と、部屋単位でリノベーションする場合に分かれます。
そのためデザイナーズマンションと違い、共用部入口部分や廊下などがごく普通の物件である場合が大半なため、室内とのギャップが出てきます。
アンバランスさを楽しむこともリノベーション物件入居する上で必要かもしれません。
リノベーションでは工事にあたり天井を抜いてしまったり、壁の石こうボードをとりはずして壁をむき出しにする所謂「あらわし」にすることが多くなっています。
これが見た目のカッコよさとなり室内に広がりと開放感をもたらすリノベーションの特徴・魅力でもあるのですが、構造上デメリットとしてあげられることがあります。
なぜかといういますと、上階や隣室との接面ともなる天井や壁のボードには音を間接的に軽減する役割を果たしているため、音漏れの原因にもなりかねないのです。
また、木造のアパートや戸建てなどを同じくリノベーションする場合は天井の梁があらわしになって古民家のようないい雰囲気にもなるのですが、音に加えて断熱効果が激減することが見られます。
デザイン性と比べてどちらを優先したいのかにもよりますが、内見時には特に上下・隣室からの音漏れには注意してみましょう。
また、旧い建物はサッシも旧く、そのため最近のサッシに比べると断熱性や防音性においてかなり劣ります。
変えている物件がほとんどないことに気づくかもしれませんが、実は分譲マンションなどでは管理規約から窓のサッシや玄関扉などが共用部分として取り扱われているため勝手に変えられないことになっていることが起因になります。
前述の天井・壁とも合わせて確認しておいたほうが良いと思います。
キッチンやバス、トイレ、照明などすべて刷新しますので工事竣工後には特に新築に入居したような気持ちよさが得られます。
ただ、デザイン性を求めるようなリノベーション物件では、キッチンがとてもシンプルかつスタイリッシュなものとなることが多く、特にシングル向けの物件などでは簡素な設備になる場合があります。
換気扇も小さく天井から吊るされただけのものなどが設置され、焼き魚が食べたい、、などのときなどは不満足に感じることになるかもしれません。
リノベーションは築浅よりも主に旧い建物に施されることが多くなっています。
そのため、電気のブレーカーが旧式なままで取り換えていない場合も結構多くみられます。
容量をもっと上げたい場合でも建物全体の供給量の関係から不可の場合も多くみられます。
とはいえ30Aもあれば一人暮らしくらいでは充分ではありますので、念のため内見時に確認しておきましょう。
インフラではもう1点、注意したほうが良い点があります。
それは匂いの問題です。
キッチン、トイレ、バスの水回りの配管の交換をしていますが、建物全体を通る配管類は特に古い建物では交換されているケースはかなりの割合でないと思っていただいても良いと思います。
そのため劣化や経年使用による腐敗などから室内に匂いが上がってくることがあります。
管理がしっかりしているところであれば定期的な洗浄などを行いますので気にすることもないのですが、そうでない物件も中にはありますので、リノベーション後で匂いが気になる場合は注意したほうが良いかもしれません。
その他、建物が古い場合には耐震補強工事がされているのか、非常時の緊急避難経路が確保されているかなども確認してみてください。
旧い分譲マンションでは大地震時には倒壊の可能性もないとは言えませんし、緊急はしごなどの設置も追いついていない物件も実際にはあります。
色々とデメリットばかり上げてしまった感じにもなりますが、リノベーションでなければ得られない満足感や魅力などデメリット以上の価値を見出せることもこれまでの入居された方々からのお話しから実感しています。
メリット、デメリットを比べながら自分だけのライフスタイルをリノベーションで見つけてみてください。
そして、このように賃貸できるリノベーション物件(リノベーション賃貸)は賃貸する上での選択肢としてデザインやライフスタイルにこだわる方たちにとってこれなしでは語れないものになってきました。
SOHOやオフィス、サロンで活用したい場合は他賃貸物件同様に各物件の管理規約によってきます。
その点をご注意の上、リノベーション賃貸をご検討いただければと思います。